疑似体験:ThinkPad

テキスト・インタビュー
金巻未来
編集
川辺洋平
カメラマン
児玉太郎

Translated by DeepL

ゴールドマン・サックス、ボストン・コンサルティング・グループを経てアンカースターにやってきたザイドラー・アンドレアス(以下、アンディ)は、Lenovo社のWindowsノートパソコン、ThinkPadを使っています。Apple社のMacBookを使っている社員が多いアンカースターで、Windowsという選択は異色です。海外企業を渡り歩き、ThinkPadを駆使するアンディの高速作業を疑似体験しながら、戦略コンサルから小さなアンカースターに来た背景についても話を聞いてみました。

 
 

ーーアンカースターではみんなMacBookを使っているのに、アンディだけThinkPadを使い続けているじゃないですか。他のパソコンと何か違いがあるんですか?

まず、ThinkPadは、レノボ社が製造・販売するノートパソコンのブランドのことです。コンサルティング業界(以下、コンサル)の人や投資銀行の人が使っているのをよく見かけます。

ThinkPadの特徴のひとつは、トラックポイントという赤いボタンがキーボードの真ん中にあるところです。

実はこれ、マウスのように、カーソルを動かすコントローラーなんです。これによって、キーボードから1秒も手が離れずにすべての作業をすることができます。

ーーでも、キーボードの下にもカーソルを動かすトラックパッドがついてますよね。

ついてはいるんですが、私は全く使わないです。前職のコンサル業界ではみんな使っていませんでした。最初に就職した会社でThinkPadが配られたとき、マウスやトラックパッドを使うなと教育されたんです。カーソルではなくて、キーボードのショートカットを覚えるように徹底していましたね。

――1秒もキーボードから手を離したくないということですか。

コンサル業界では1秒でも多く考えることに時間を使うため、作業を1秒でも短くするという考え方が根底にあります。
だから、ノートパソコンが身体の一部になって、考えたことが即座に作業に反映されるくらい、ショートカットを体に叩き込むんです。

最初はとても苦労するけど、慣れたら本当に早いですよ。とにかくキーボードから離れなくてもすべての動作ができるので。

――具体的に、どれくらい早いのか見てみたいです。

いいですよ。エクセルで一緒に作業してみましょう。

あ!いま見た!?

――え。見てないです。一瞬のうちに画面変わりましたね?

いま無意識に「エクセルを開く」という動作をしていましたが、[Windowsボタン] > 検索欄に「ex」を入力 > [Enter]というキーボード操作でエクセルを開きました。

――本当に一瞬で見えなかったですよ!私はMacBookなので、エクセルのアプリを探して、カーソルを合わせて、ダブルクリックしてエクセルを開いていますよ。

コンサルのパソコンの使い方は、選ぶより「書く」という感じです。

たとえば、一般的には、パワポのフォントを変えるとき、カーソルをフォントの選択欄まで持っていきますよね。そして(▼)プルダウンマークをクリックして、フォント一覧を開いて、選択してますよね。でも、僕の場合は、全部ショートカットを使います。

――真ん中の赤いボタンでカーソル動かせるのに!それもだめなんですね。

赤いボタンでカーソル動かすことももちろんあるけど、基本的にキーボードです。
例えば、パワポのフォントを変えたいと思ったら、まずは[Altキー]を押します。

すると、クリック可能な項目すべてに、記号が表示されるんです。
そうしたら、目当ての記号をキーボードで押します。

やってみましょう。例えば、フォントを「Arial」に変更したいとします。
まず [Alt] キーを押して、記号を表示して、「フォント」の上に表示される記号のキーを押すと、フォントを選択する機能たどり着きます。
ここからもポイントですが、フォントは選択肢から選ぶのではなくて、フォント名「Arial」を入力します。

――選択したほうが早そうなのに、書くんですね。

訓練すると「頭の中で起こっていることをそのまま入力する」のが一番はやくなるんです。先程いったように、基本的にやりたいことを「書く」という感じですね。でも慣れたら本当に速いし、一瞬です。

――使い続けてるうちに、手がキーボードと一体化しているような感じなんですね。

そうですね。あと、よく聞く話ですが、ThinkPadをもらったらすぐ、F1キーを剥ぎ取ってしまうことが多いです。ThinkPadのF1キーは、エクセル上で、ヘルプページを開くキーなんです。これはほぼ使いません。一方、隣にあるF2キーは、エクセルのセルの中を展開するために、頻繁に使います。だからよく、F2キーを触ろうとして、間違えてF1キーを触ってしまうんです。

それでヘルプページが開いてしまって、数秒間作業が止まってしまうことがある。それを避けるために、F1キーを最初から剥ぎ取ってしまう人がコンサル業界にはたくさんいました。

ーーThinkPadとショートカットが大好きなことはよくわかりました。ちなみにMacBookではショートカットは使えないんですか?

MacBookだとできないんですよ。ショートカットは使えるけど、そこまで細かく使えません。

――今もアンカースターは全員MacBookを使っているし、効率重視のコンサル業界とアンカースターは全く違う環境だと思いますが、アンディがアンカースターに転職するきっかけは何だったんですか?

ザイドラー・アンドレアスーーアンカースターではストラテジーディレクターとして、日本企業の事業転換に従事。前職のボストン・コンサルティング・グループ(東京)では、ヘルスケアや工業製品の分野で、企業戦略の立案や、グローバルPMI案件に従事した。ドイツで生まれ、幼少期をドイツと日本で過ごす。大学入学前には、お笑い芸人として研修を受け、日本のテレビ番組にも出演した経験がある。趣味は地元横浜の散策。

アンカースター代表の児玉太郎とは、知り合いの紹介で初めて出会ったんですが、当時アンカースターはまだ存在していませんでした。転職したというよりは、児玉太郎という人についていったという表現の方が正しいです。

児玉と初めて会った時は、児玉がこれからやろうとしていることについてのコンセプトやアイディアと、アンカースターという名前だけがあって、他は何もありませんでした。オフィスも無くて、資金もまだこれから集めるという段階でした。

そこで聞いた児玉の話にワクワクして、とりあえずこの人について行きたい!っていう直感だけでコンサルを辞めることにしました。

――その時、コンサルにいながら転職活動をしていたんですか?

いいえ。全くしていませんでした。コンサルを辞めようとも考えていませんでした。児玉の語るビジョンが、自分では思いつかないことだったから、「何が見られるんだろう」っていうワクワク感と直感だけでついていきたいって思いました。

児玉と初めて会った当時はまだ20代と若かったので、児玉に言われたことの8割くらいが視点が高くて理解できなかったんですよね。
彼の言ってることは成り立つのか?とか、お金どうするのかな?とか、色々なことが理解の範疇を超えていた気がします。

ーーわからないものについていくってとても勇気がいりますよね。

多分「わからないもの」を追求することが個人的にすごく好きなんだと思います。自分で想像できて、今後こうなるだろうっていうシュミレーションができたら、自己完結できてしまうから、わざわざその道を歩まなくていいと思ってしまって。

だから「わからなさ」と「直感」だけで転職を決意しました。

――コンサルのキャリアを歩み続けたら、今後こうなるだろうというシュミレーションができていたんですか?

私が前職を辞めた当時は入社4年目でしたが、このままここに居た場合、5年後に毎日こういう過ごし方をしているだろうっていう想像は容易にできました。5年後は、このポジションで、こういうクライアントと、こういう対話をしているんだろうなって。

コンサルって、だいたい4年目くらいで最初の節目が訪れるんです。そろそろ転職しようか、あと4年位続けようか、ということを考えるタイミングが。

――一概には言えないと思いますが、コンサルに居続けるか辞めるかは、どういう選択基準があるんですか?

もちろん、コンサルはとても面白いです。10年やったら毎日最先端のチャレンジがあるし、飽きないと思います。でもワークスタイルとか、日々のルーティンに飽きてもっと未知の世界にチャレンジしたいって思う人が一部いるというイメージです。

――コンサル業界からの転職で苦労したと思うことはありますか。

実は、コンサルって適職を探すのに苦労するケースが多いんです。

たとえば入社4年目だと、20代であることが多いのですが、同じ年代の他業種と比べると、給与はそんなに安くはありません。

だから普通の事業会社に転職してコンサルの時と同等かそれ以上の給与水準を保つには、管理職やマネージャー職以上になるしかない。でも、コンサル4年目は、まだマネジメントはできません。

というのも、コンサル業界の入社4年目だと、事業会社で管理職をするには「リーダーシップ」の経験が圧倒的に足りないんなんですよね。
4年間で、仮説思考とかロジカルシンキングを叩き込まれて、スキルもたくさん持っていて、経験も他業種に比べれば豊富。でも、ある部門のリーダーを経験しないまま転職することになってしまいます。

ーーとなると、コンサルティング業界の経験が浅い若手は、スタートアップやベンチャー企業に転職するケースが多いのでしょうか。

そうですね。スタートアップに限らず、スモールチームに転職するケースは多いと思います。スタートアップや、従業員100人以下の企業の経営企画部であれば、マネジメント経験がなくても、まずはスキルで勝負できるので。

あと、選択肢として多いのは、プライベート・エクイティやファンドなど、金融の世界に入り込むパターンですね。

ーーちなみにコンサル業界で働き続ける場合、チームマネジメントを経験できるのは何年目くらいなんでしょう?

会社によっても違うと思いますが、平均的に8年目くらいかなと思います。その頃には、自分のチームもリードしないといけませんが、クライアントもリードしないといけない立場になります。それはそれで、クライアントを巻き込んで伴走するチャレンジもあって、面白いと思います。

ーー実際、コンサル業界からアンカースターにきて一番違いを感じるところはどんなところですか。

コンサル業界にいたときと今との時と一番の違いは「仕事が与えられない」ということです。

給与も、恵まれた環境も、デバイスも与えられるのに、仕事は与えられない。それが逆に焦りにもなって、「自分は今、何をしないといけないんだろう」と最初は悩んだりしていました。

ーー今もそれは変わらないですか。

「仕事」が与えられないところは、転職した当時と変わっていません。

でも去年、アンカースターという会社のパーパス(存在意義)が言語化できたことは大きかったです。パーパスが言語化できたので、今は「パーパスを実現するためには何をすればよいのか」を日々考えて、それに基づいて行動しています。

アンカースターのパーパスは ”Envision More” というものなので、今は日本の企業の未来を一緒に想像しながら、その未来に向かうお手伝いをするような事業をリードしています。

※Envision moreについては次月以降の記事でご紹介させていただきます

――仕事が与えられないから自分で仕事を創り出しているということだと思いますが、児玉との関わり方や役割分担はどうなっているんですか。

私は児玉にヒントをもらいながら、アイディアを仕組みや構想に落とし込んだり、事業化するところを一緒にやっています。

児玉は、常にヒントだけくれます。より視点の高い所から、ここに何かあるんじゃないかっていうアイディアや方向性を示してくれたり。そこに新しい何かがあるかもしれないとワクワクして、深堀りしてチャレンジしてみるという感じです。

この仕事をしてくれという指示は一切されませんが、私がチャレンジして間違えたら、こういうやり方もあるし、ああいうやり方もあるよねという幅を見せてくれる。それを受けて私が何度もチャレンジしていくというようなコンビネーションです。

ーー仕組みや構想に落とし込むところは、ThinkPadが欠かせませんね。

考えることに時間を割くために、作業には絶対時間かけたくないですからね。
ちなみに、ThinkPadしか使えないわけじゃなくて、MacBookも使ったことあるんですよ!

ーー昔、児玉にMacBookに移行させられてましたよね。

食わず嫌いじゃなくて、ちゃんとMacBookを1年試してみてから、改めてThinkPadがいい!ってなっただけですからね。

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