疑似体験:リーダーシップ古今東西

話し手
児玉太郎
アート
黒柳茂
テキスト
金巻未来
取材・編集
川辺洋平

Translated by DeepL

ーー太郎さんの古巣のFacebook社が社名を変更したのが話題になってますけど、どう感じていますか。

Facebookが、Metaという社名に変わりましたね。いろいろと読んでいたんですが、マーク・ザッカーバーグが、全世界に向けてMetaという社名に変更するにあたって説明している「Founder’s Letter, 2021(以下、ファウンダーズレター)」というのがあって。

そのファウンダーズレターの中で印象的だったのは、ミッションは変わらない「Our mission remains the same — it’s still about bringing people together.(私たちのミッションは変わりません — これからも人々をつなげることです)」けど「all of our products, including our apps, now share a new vision(私たちのアプリ群を含むすべてのプロダクトは、新しいビジョンを共有します)」って言っていて。つまり、ミッションは変わらないけど、新たにビジョンができました、と。

今までFacebookにビジョンはなかったんですよ。だけど今度はビジョンができて、それは「to help bring the metaverse to life.(メタバースを現実のものにする)」なんです。

ビジョンとは、直訳だと、視力・視覚という意味です。ミッションが目標だとしたら、ビジョンは想像のこと。マークは「ミッションが達成されている状態」が想像できちゃった、ということです。それは、メタバースの中で、達成されていると。そういう想像なんだと。

その、もうマークには見えているビジョンを、動画とか、ファウンダーレターを通じて、一生懸命に世の中に伝えようとしています。

ーー僕もFacebookでマーク・ザッカーバーグのタイムラインを見て、動画も1時間以上あって、自分の想いを丁寧に語ってるのが印象的でした。そんな、強い想いを持っているリーダーの話といえば、今放送している大河ドラマで、渋沢栄一を主人公にした「青天を衝け」が思い出されるんですけど。太郎さんは「青天を衝け」観ていますか?

そうですね。僕は大河ドラマがとても好きで、もちろん「青天を衝け」も観ています。毎週日曜日が待ち遠しい。渋沢栄一は、明治維新から昭和初期まで、1860年から1930年ぐらいですかね。江戸幕府が終わって、新しく日本が一つの国になっていく過程の中で活躍したリーダーなんです。

まだ日本には当時、仕組みが何もなくて。郵便もない。鉄道もない。銀行もない。むしろ日本はたくさんの藩に分かれていて、藩ごとに、ルールも違った。モノサシも、法律も、暮らしも違う。それを、一つの国にまとめ、作り上げていく。

大河ドラマって、もちろん毎年、主人公は違うし、時代も違うんですが、ビジョンを持ってるリーダーが、自分の作りたい世界を作ろうとする話、というのは同じです。いろんな時代のいろんなリーダーが、何かを作っていく話。それが楽しみで。

ーー大河ドラマはすべてリーダーの話、というのは面白いですね。太郎さんにとってリーダーの定義というか「リーダーとは」みたいなものはあるんですか。

まず、リーダーは「見えている人」だと思います。でも、未来が見えている予言者みたいなのではなくて、今とは違う世界を想像していて、それが頭の中に見えている。予言するのは客観的だけど、もっと「自分が主体的に作りたい世界が見えている人」かな。

あとは、その自分が想像してワクワクして止まない世界を、どうやったら実現できるのか、どうやったらそこに向かっていけるのか、みたいなことに日々邁進している人のことをリーダーだと思っています。想像しているだけじゃなくて、実現のために動いている人。

そしてもちろん「リーダー」なので、その世界を作るのは自分だけじゃできないから、みんなの協力を仰いだり、たくさんの人たちを巻き込みながら、進んでいく人かな。そうやって、みんなをリードしていく人をリーダーだと思っています。

ーーマーク・ザッカーバーグの話から、渋沢栄一について話してもらいましたが、太郎さんは他にも、ソフトバンクの孫さんとか、色々なリーダーとご一緒してきましたよね。国や時代を超えても、リーダーがリーダーである所以は、同じだと思いますか。

そうですね、同じかも。孫さんって、いっつもすごいワクワクしているんですよ。なんかいろいろ見えているんでしょうね。マーク・ザッカーバーグも、ソーシャルネットワークというものが、国境や言語を超えて人を繋げる力があって、それが本当に繋がったときに「なんてワクワクする世界になるんだろう」っていうのが、見えていた。

あと、マークも、渋沢栄一も、孫さんも、一人じゃ全く実現できないと分かっていますよね。イーロン・マスクも、ビル・ゲイツも「見えてる世界がある」ということと、自分だけじゃそれは作れないから、組織やチームとか「仲間の力も得ながらそれを実現しようとしている」のはやっぱり同じかな。

ーーさっき太郎さんは、リーダーが見るビジョンは主観的に見えているもの、とお話していました。その主観的な、ある意味「自分にしか見えていないビジョンを人に伝えて、巻き込んでいく」ためには、どういうことが大切だと思いますか。

マークのファウンダーズレターがまさにですが「自分の見えている世界を、伝えようとすること」はとても大事だと思います。そして、伝えようとし続けることも大事ですよね。文章で伝わる人もいれば、動画で伝わる人もいれば、対話で伝わる人もいる。伝わるまでに時間がかかる人もいるし、他の人に手伝ってもらって、はじめて伝わる人もいます。伝えたいという気持ちを強く持ち続けて、色々な伝え方を試しつづける情熱とエネルギーが必要ですね。

そうやって熱を持ったビジョンのすごいところは、人を介してどんどん伝播していくこと。頭の中に同じ世界を想像できるようになった仲間たちが、そこに近づいていくための活動に励みます。道筋をステップに分解したり、道具を作ったり、ルールをつくったり、計画通りに進んでいるかチェックしたり。熱量があるビジョンには、こうやって、構造体というか、仕組みができてくる。たくさんのサブリーダーというか、マネージャーたちが、現場を組織して引っ張りながら、ビジョンを現実のものにしていくような。


ーー熱量が大切なんですね。ビジョンドリブンな組織の話になってきました。ところで、どのような人がこの、現場を引っ張っていく、マネージャーになっていくイメージをお持ちですか。

海外と日本で、マネージャーになる基準というか、仕組みがだいぶ違います。

日本だと、現場でイケてた人がマネージャーになっていく感じがしますよね。営業成績が良かったとか、大きいプロジェクトを成し遂げたとか、大きい案件を取ってきたとか、難しい相手を落としたとか。そういう風に、現場で実績を上げた人が、マネージャーになっていくのでは。

ーー海外では違うんですか?

はい。海外は全然違うんですよ。

Facebookにもたくさんマネージャーがいたんですが、彼らはみんな、リーダーシップというスキルを学び、身につけた上で、マネージャー職に応募して、たくさんの面接を経てマネージャーになっています。営業成績が良かったからマネージャーになるとか、優秀なエンジニアで複雑なシステムを組み上げたからマネージャーになるとかはありません。

海外だとリーダーシップというものは、学べるものだとされています。弁護士とか建築士みたいに、一つの職種のように、プロフェッショナルとしてリーダーシップというスキルを身につけることができる。

ーーリーダーシップスキルっていうのはどういうふうに学ぶんですか。

リーダーシップは研究されていて、学問(Leadership studies)にもなっています。たくさん文献もあるし、論文もあるし、本も出てるし、リーダーシップは誰でも学べるんです。

本屋さんに行くとリーダーシップというコーナーがあって、何百冊という本が並んでいます。もちろん、それぞれの本は、いろいろな工夫を凝らして差別化を狙っているとは思いますが、プロローグに書いてあることはおそらく一緒で「リーダーシップはしっかりと順を追って学んでいけば、学んでいけるものです」とあるはずです。

また、多くの会社では、社内でリーダーシップ研修が通年行われています。興味があれば、誰でもリーダーシップ研修が受けられます。上司の許可も不要ですし、人事部に任命される必要もありません。もちろん無料ですし、望めば何度でも同じ研修を受けられます。マネージャーになってからも、初心を忘れないようにするために、研修を受けにきている人もいます。

そうやって、本を読んだり、研修を受けたり、セミナーに参加したりして、リーダーシップスキルを身につけてから、社内のマネージャー職に応募したり、転職活動をして、他社のマネージャー職にチャレンジしたりするんです。パイロットが飛行機の免許を取得してから、飛行機を操縦する仕事に就くのと全く一緒です。

また、リーダーシップスキルは、マネージする組織の規模に応じて内容が大きく異なるとされています。本屋さんの棚も、小規模チームのためのリーダーシップ、中規模組織のためのリーダーシップ、大規模組織のための経営とリーダシップ、にジャンルが分かれています。これも飛行機に似ていますね。小型飛行機の免許と、ジャンボジェットの免許は分かれています。

小規模組織におけるリーダーシップスキルとしては、個々の力を発揮させていく方法(エンパワーメント)や、チームを結束させる方法(チームビルディング)などを学びます。複雑な状況における優先順位の付け方や、リソースの分配の仕方なども大切になってきますね。また、チームメンバーと重大な対話(クルーシャルカンバセーション)をするための手法などについても、勉強します。

中規模組織では、マネージャーをマネージしなければなりません。予算管理や採用戦略なども大事になってきます。対外的に話す機会も増えてくるので、プレゼンテーショントレーニングやスピーチトレーニングも入ってきます。外部パートナーとの協業や、業務アウトソーシングのマネージメントも必要になってきます。

大規模組織になると、重大な経営判断を下していくためのトレーニングや、パブリック・リレーションズ戦略、制度設計や、経営ガバナンスのデザイン、ステークホルダーのマネージメントなどが加わってきます。

「10人のチームをマネージするためのリーダーシップスキルは持っているけど、100人の組織はまだ無理」みたいに、自分の保有しているスキルをみんな把握しています。だから「この組織は大きすぎます」とか「中規模組織のリーダーシップスキルを身につけてからチャレンジしたい」とか、そんな会話がよく聞こえてきます。

ーーリーダーシップ研修は、日本の企業にもあるんですか?

日本の企業ではマネージャーのための研修というと、リーダーシップのスキルではなくて「リーダーとしての心得」みたいなテーマで、リーダー研修を実施していることが多いようです。また、頻度に関しても、マネージャーに就任したら、1度だけリーダー研修を受けるという話をよく聞きます。
そもそも、現場で実績を積み上げてきた人がマネージャーに抜擢されるのだとすると「研修で教わることなんてない」と思っているはずです。なので、必然的に日本企業のマネージャーは個性が豊かですよね。「社内転職」と言う言葉が使われていると思うんですけど、部署が変わると、カルチャーも、やり方も、メソッドも違う。

一方、リーダーシップスキルが標準化というか、体系化されている海外では、部署を移っても、前のマネージャーと新しいマネージャーで持っているスキルが一緒です。今までの方法が、次の部でも当たり前のように使えます。これは、会社をまたいでも、ほぼ同じだと思います。同じ業界内での転職だったら、前職とほぼ同じ感覚で初日から仕事できると思います。ここが日本と大きく違います。

ーー私も日本の企業に勤めたことがあって、部署や上司によってマネジメントの仕方が全く違った経験があります。海外のようにリーダーシップが体系化されてることによって、成し遂げられることってありそうですよね。

リーダーシップが体系化されてると、いくらでも組織を大きくすることができるのかもしれません。マークはメタバースに注力するために、先日、新しく1万人雇いますと宣言していますよね。1万人雇うということは、仮に一つのチームが10名だとすると、1,000人のマネージャーがいるってことですよね。その1,000人のマネージャーをマネージする100人のシニアマネージャーがいて、それをマネージする10人のディレクターがいて。すごいですよね。

この「1万人を雇います」っていう発言は、1万人雇ってもちゃんとマネージできる自信があるということです。こうやって、リーダーシップの体系化が実現できるいる組織は、新しいビジョンにすぐに対応して、組織の大きさを変えたり、仕組みを変えたりすることができるということなのかもしれません。

ーーなるほど、自ら時代を切り開いていくリーダにとって、必要な自信なのかもしれませんね。今日はマーク・ザッカーバーグの話から、はからずも古今東西のリーダーシップの話ができて楽しかったです。ところで、アンカースターは、これからどんなチームに成長していくんですか。

うーん、アンカースターはすごい個性的な、属人的な組織なので。まったくリーダーシップが体系化されていません。だから、このままだとなかなか大きい会社にならないな。どうしましょうか。笑

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