疑似体験:ニューヨーク Experience: New York

テキスト(英語)
関ソフィア
日本語翻訳
山藤勇人
写真提供
Mimi Soule, CoCo Hubbeling, Miki Nakata, Nelson Lin, Jackie Morris
カバー写真
Chris Moran
編集
金巻未来

Translated by DeepL

※英語の記事を日本語に翻訳しています

この記事では、ニューヨークで暮らすAnchorstarの仲間たちから送ってもらった写真と、それに対するコメントをご紹介していきます。今回記事を書くのも、元Brooklynite(Brooklynの住人)のSophiaです。2020年から東京に移り住み、現在はAnchorstarで働いています。

Sophia Seki Fox --- ニューヨークで生まれ育ったが、エンパイアステートビルにも、自由の女神にも、一度も登ったことが無い。現在はAnchorstarでコミュニティマネージャーとして働きつつ、休日は東京散策をして過ごす。

New Yorkers are born all over the country, and then they come to New York City and it hits them: Oh, that’s who I am.
– Delia Ephron

ニューヨーカーっていうのは、出身地がニューヨークの人って意味じゃないの。いろいろな人があちこちの国からニューヨークに移り住んできてそこで気が付くの、私はここに来るために生まれてきたんだわって。
‐ デリア・エフロン

ニューヨークが特別なのは、何と言っても「感じる」のではなく「感じさせられる」ところにあります。あの街の雰囲気を気に入ったり、嫌ったりすることはあっても、無視することはできません。あの街の喧騒、人の熱気を気にかけないなんてことはできません。20年間ニューヨークで過ごして分かったことは、ニューヨーカーになるということには、多少の狂気をはらんでいるということです。あえて愛を込めてこのような表現を用いましたが、一年であれ、一週間であれ、たとえ一日であっても、街中を歩いているとニューヨークがまとわりついてくるのです。あなたがニューヨークを構成する一部となるのと同時に、ニューヨークもまたあなたの一部になるでしょう。

Anchorstarに初めて足を踏み入れた時、懐かしいニューヨークの香りが漂っていました。私が入る前の話ですが、どうやらAnchorstarチームの皆さんは毎年ニューヨークを訪れていたようです。その度に新たなインスピレーションを得て、絆も深まったことでしょう。ただ、コロナ禍の影響でここ二年間は自粛していたそうです。私も例外ではなく、故郷を恋しく思っていた頃でした。そこで、Anchorstarの皆さんと、どうすれば東京とニューヨークを隔てる10,800㎞を縮めることができるか議論を重ねました。

そして今回は、この記事の冒頭でもあったように、ニューヨークに住むAnchorstarの仲間たちに協力を仰ぎ、ローカルにしか体験できないニューヨークならではの体験を、写真に収めて共有してもらいました。実際には、なかなかニューヨークに足を運ぶことはできませんが、少しでも現地の日々の暮らしや街の雰囲気が伝わればと思います。また私と同じように自分にとっては日本が海外だ、という方は懐かしく思い出しながら読んでいただければと思います。それでは、Enjoy!

Mimi Souleさんからの写真

Mimi Soule --- Brooklynで生まれ育ち、普段は経済研究者としてSyntaxでサスティナブルな消費や再生可能エネルギーについて研究する。休日は外食したり、ダンスしに行ったり、NYならではの魅力を見つけ出そうと日々街を探検している。

“Sohoで開かれる友人のバースデーディナーに向かう途中、地下鉄で撮った写真です。この2人のカップルは、ローラースケートで華麗な乗車をキメただけでなく、ファッションも完璧にキマっていました。その頃は、ニューヨークで Fashion Weekが開催されていたこともあり、ファッションショーの帰りなのかと思うほど最高のセンスでした。ニューヨーカーの特徴として、ファッションを通じて自己表現をするのが挙げられますが、そういう意味ではこのカップルは生粋のニューヨーカーです。こんなイカしたローラースケート・カウボーイブーツを履いた人たちを他の都市で見ることができるでしょうか?”

CoCo Hubbelingさんからの写真

CoCo Hubbeling --- コロラド州フォートコリンズ出身の写真家。サバナ美術大学を卒業したのち、ニューヨークのBrooklynに活動拠点を移す。現在はデザイン・ブランディング・戦略をフルサービスで提供するGretelで写真家インターンとして働いている。

“一生懸命働いた一日の終わりの食卓から一枚。友達とご飯を食べること程最高に幸せなことはありません。New Yorkスライスであればなおさらです!”

“これはニューヨークの南東側にあるビルの下で何かを読んでいる男性の写真です。私が急いで仕事に向かうのと対照的に、彼はリラックスしてます。お互いに赤の他人ですが、私たちがここに一緒に存在しているということがこの街を定義しているのです。こんなにも近くにいるのに、誰もが自分自身にとって最も心地良いように過ごしています。人間観察もまた、ニューヨーク・エクスペリエンスの一部です。”

“Brooklynで見かけたカスタムナンバープレートにこだわりを見せる車の写真です。ここニューヨークでは、誰もが自分のものを改造し、個性を表現したがります。ナンバープレートは特に面白いものが多いので、見かけるたびについ「誰がこれを選んで付けたんだろ」と、クスっとしてしまいます。このプレートはミネソタ州ですが、ニューヨークで何をしているのだろう?それより、SPICIEって誰なんでしょう?”

Miki Nakataさんからの写真

Miki Nakata --- 世界最大級のクラウドファンディングサービスであるKickstarterの日本のカントリーマネージャーを務める。日頃からアーティストやデザイナー、クリエイターとプロジェクトを育み、世界中から支持されるコミュニティを形成している。ニューヨークを拠点とし、2017年にKickstarterに入社。日本とアメリカ文化に対する深い造詣を活かし、映画プロダクション、広告、テクノロジーを含む、クリエイティブメディアの分野で15年以上にわたりニューヨークと東京で活躍する。

”Brooklyn自宅近郊を散歩中に撮影した一枚。きれいに敷き詰められた桜の花びらの絨毯が壮観で、このまま一休みしてしまいました。”

”自宅アパートのゴミ捨て場で発見した、哀愁ただようスマーフ。段ボール箱はそのまま捨てられ、分別なんてあってないようなアメリカのゴミ捨て場であるにもかかわらず、日本の深夜の駅構内で酔っぱらいのサラリーマンに遭遇したような感覚を味わいました。”

Nelson Linさんからの写真

Nelson Lin --- 英語教師でありながらライターでもあり、かなりの読書家。日々、コミュニケーションの仕組みや、言語と文化ついて探究に励んでいる。夜はボクシングジムに通い、休日はテニスをして過ごす。旅のお供はいつもトマトジュース。

”ニューヨーカーで良かったと思うのは、この街の提供してくれる選択肢の多さを実感するときです。しかし、Astoria, Queensに住んでいて、熟成肉、燻製肉が食べたいと思ったら選択肢は一つしかありません。この写真のMuncan Food Corpは家族経営の肉屋で、幅広い種類の肉を販売しているだけでなく、ピクルズや、ルーマニア、セルビア、ハンガリーなどの東欧諸国から輸入した商品も取り扱っています。買う前にいつもサンプルもくれるのも特徴です。たいていの場合、店員さんが頼まなくてもよく冷えたサラミやハムを笑顔で手渡してくれます。”

”Slava Ukrayini!(ウクライナに栄光を!)と書かれた横断幕がEast Villageにあるとある店の店頭に掲げられています。このキャッチフレーズは2022年4月現在も続くロシアのウクライナ進攻に抵抗する象徴として世界中で使われるようになりました。1954年以来、家族経営レストランであるVeselkaは、お腹をすかせたニューヨーカーを満ちたりた気持ちにさせるウクライナ料理を提供し続けています。ニューヨーカーたちはニューヨーカーらしく、ウクライナを支援するためにデモをしたり、ウクライナ関係者のビジネスを少しでも応援しようとしています。Veselkaのボルシチ(家庭的な冬のスープでウクライナの郷土料理)やパン類の売り上げの100%がウクライナに送られます。テーブルには2つのQRコードが貼られており、一つはメニューを表示し、もう一つはVeselkaが運営するウクライナ支援サイトにつながってます。同サイトではAmazonのほしいものリストも公開されており、応急キット、寝袋、迷彩服や痛み止めなどの救援物資を直接送ることもできます。ニューヨーカーにとってVeselkaは、ただの行きつけというだけでなく、協調と平和の象徴でもあるのです。”

Jackie Morrisさんからの写真

Jackie Morris --- Brooklynに拠点を置きクリエイティブ領域で活躍する。デジタルメディアや公共アートプロダクションでキャリアを重ね、現在はデジタルメディアのVICEでEAとプロジェクトマネージャーとして、様々なプラットフォームを通じて多種多様な人の物語を発信し続ける。ダンスが大好きで、ニューヨークの橋を颯爽と自転車で駆け抜けたり、見知らぬ人に話しかけたりすることを楽しむ。
Taken by Chris Moran

“ニューヨークの夏は特別なものです。暑くなってくると、人々の中で何かがプツンといって音を立ててしまいます。夏の間の3か月は、街中でだれかと一緒に踊ったり、笑ったり、走ったり、一緒に汗をかきたいという衝動にかられ続けます。”

“ニューヨークではいちいち疑問に思ってはいけないものがたくさんあります。この写真のものもそのひとつです。一種の心地よい無関心とも言えます。(冷めてるだけだと言う人もいますが、過度な表現によって生まれるオープンな空気感があると私は思いたいです)”

“ニューヨークときいて、夕日や朝日を見る名所を連想する人はあまりいないかもしれません。それでもニューヨークのビルの屋上からみた夕日は今まで見てきた景色の中でも指折りのものです。空と屋根上が境界となり、あたかも二つの世界が融合するのを目の当たりにしているかのようです。”

 

協力者の皆さん、たくさんの写真とコメントをありがとうございました。読者の皆様も、ニューヨークとは何かを様々な角度から疑似体験できる機会になったのではないでしょうか。ニューヨーカーは確固たる個人でありながら、夢を叶えること、その夢がどれほど無謀であろうと、それを叶えようとする姿勢は共通しています。この記事を最後まで読んでいただいているのであれば、もうお分かりかもしれませんが、ニューヨークの暮らしはかなり特殊で、毎日が思わぬ発見で満ち溢れています。

反面、ニューヨーカーであり続けるには寂しさや疲れが付きまといます。過度な希望、意欲、野心に晒され続けると心が消耗してしまいます。また、この街での主なストレスの原因である生活費も忘れてはいけません。ニューヨークは私から確実に何かを奪っていますが、果たしてニューヨークは私に何を授けてくれているのだろう?という質問が浮かぶこともあるでしょう。

では、なぜそれでもニューヨークに残ろうとするのでしょうか。それは、ニューヨークという街は、「真の帰属意識」を経験する機会を無限に与え続けてくれるからだと思います。コミュニティを見つけたり、作り出したりする街なのです。この2年、夢だった日本の東京に住むことができて、素晴らしい日々を送っていますが、時々ニューヨークのコミュニティが恋しくなります。今回の企画は、私の大好きなニューヨークを再発見することのできる、ホームシックを癒してくれる良い機会でもありました。ニューヨークの何が恋しいかというと、それは、あのレストランでも、あの景色でもなく、ニューヨーク全体を包むあのエネルギーとあの人たちなのです。ニューヨークを選ぶというのは、ニューヨークを受け入れるというのがニューヨーカーの不文律となっています。ニューヨークとは何かを真に理解することは一生できないかもしれません。疲れるし、興奮するし、盲目的にもなります。ひとつ言えることは、ニューヨークの精神というのは、あの街のあらゆる街角に存在しているもので、誰しもが決して目を離すことのできないものだということです。

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